日本の病院と健康保険:病気やけがの時に知っておきたいこと
日本での生活や仕事は新しい発見に満ちていますが、慣れない環境での病気やけがは大きな不安を感じるかもしれません。しかし、日本には外国人の皆さんが安心して医療を受けられるための制度や仕組みがあります。
このガイドでは、日本の医療システム、特に「国民健康保険」の利用方法や、病気やけがの時にどのように病院にかかれば良いかについて、詳しく説明します。これらの情報を知ることで、もしもの時にも落ち着いて対応できるようになります。
1. 国民健康保険について理解する
日本に住む人は、病気やけがをした時に経済的な負担を減らすため、何らかの公的医療保険に加入することが法律で義務付けられています。会社で働く方の多くは「健康保険(社会保険)」に加入しますが、それ以外の方(例: 技能実習生、特定技能の外国人労働者で会社の健康保険に入らない場合、または個人事業主など)は「国民健康保険」に加入することが一般的です。
1.1 国民健康保険とは何ですか?
国民健康保険とは、皆さんが病気やけがで病院にかかった時、医療費の一部を国が負担してくれる制度です。これにより、病院の窓口で支払うお金は、医療費の原則3割(年齢などによって異なります)で済みます。残りの7割は国民健康保険が支払ってくれます。
1.2 加入方法と必要なもの
日本に入国し、住民登録を済ませた外国人も、原則として国民健康保険に加入する義務があります。
- どこで加入できますか?
- お住まいの市区町村役場の国民健康保険担当窓口で手続きを行います。
- 加入に必要なものは何ですか?
- 在留カード
- パスポート
- マイナンバーカード(持っている場合)
- その他、市区町村によって必要な書類がある場合がありますので、事前に確認することをおすすめします。
加入手続きが完了すると、「国民健康保険被保険者証」(保険証)が発行されます。これは、病院にかかる際に必ず必要になる大切なカードです。
1.3 保険料について
国民健康保険の保険料は、皆さんの収入や世帯の状況によって決まります。保険料は毎月支払う必要があり、支払いが遅れると、保険証が使えなくなったり、医療費の負担が増えたりする可能性がありますので注意が必要です。保険料の納付方法や金額については、お住まいの市区町村の窓口に相談してください。
2. 病院での受診方法
病気やけがをした時、どのように病院に行けば良いのでしょうか。
2.1 病院の種類を知る
日本には、主に2種類の病院があります。
- 診療所(クリニック): 町の小さな病院で、特定の専門分野(内科、外科、皮膚科、耳鼻咽喉科など)に特化していることが多いです。まずは、かぜや軽いけがなど、日常的な病気の場合は診療所を受診するのが一般的です。
- 総合病院(大学病院、総合病院): 多くの専門科があり、入院設備も整っている大きな病院です。より専門的な検査や治療が必要な場合、または重い病気やけがの場合に利用します。大きな病院では、原則として診療所からの「紹介状」がないと、初診時に追加料金がかかることがありますので注意してください。
2.2 受診の流れ
- 病院を探す: 症状に合った診療所や病院を探します。インターネットで「〇〇科 近く 病院」と検索するか、同僚や知り合いに聞くのも良い方法です。
- 受付: 病院に着いたら、まずは受付に行き、保険証を提出します。初診の場合は「問診票」に症状や過去の病気について記入します。記入が難しい場合は、受付のスタッフに相談してください。
- 診察: 自分の名前が呼ばれたら診察室に入り、医師に症状を伝えます。メモに症状をまとめておいたり、翻訳アプリなどを利用したりするとスムーズです。
- 会計: 診察が終わったら、待合室で会計を待ちます。名前が呼ばれたら、窓口で医療費の自己負担分を支払います。
- 薬: 薬が必要な場合、「院内処方」で病院内で薬がもらえる場合と、「処方箋」をもらって病院の外にある「調剤薬局」で薬をもらう場合があります。処方箋は有効期限があるので、早めに薬局に行ってください。
2.3 病院に持っていくもの
- 国民健康保険被保険者証(保険証)
- 在留カード
- お金(診察代、薬代など)
- お薬手帳(普段飲んでいる薬がある場合)
- 体温計(熱がある場合)
3. 緊急時の対応
重い病気やけがで、すぐに治療が必要な場合は、救急車を呼ぶか、緊急外来のある病院へ行く必要があります。
3.1 救急車を呼ぶ時(119番)
- 命にかかわるような重篤な状態(意識がない、呼吸ができない、大量出血など)や、すぐに病院に行かなければ命の危険がある場合に119番に電話して救急車を呼びます。
- 119番は火事と救急の両方で使う番号です。電話に出たら「救急です」と伝えてください。
- 自分の名前、現在の場所(住所や目印)、症状を落ち着いて伝えます。
- 日本語でのコミュニケーションが難しい場合は、英語などの多言語対応が可能な場合もありますが、できれば日本語を話せる人に電話を代わってもらうのが最も確実です。
- 救急車は、軽症の場合は利用を控えるようにしてください。本当に必要な人が利用できなくなる可能性があります。
- 緊急性の判断に迷う場合は、「救急安心センター事業」である「#7119」に電話をすると、医師や看護師などが症状を聞き取り、病院に行った方が良いか、救急車を呼ぶべきかなどをアドバイスしてくれます。このサービスは一部の地域で提供されていますので、お住まいの地域の状況を確認してください。
4. 医療に関する多言語支援と相談窓口
日本語でのコミュニケーションが不安な方のために、医療に関する多言語支援サービスや相談窓口があります。
- 国際医療情報サービス: 特定非営利活動法人AMDA国際医療情報センターなど、外国語での医療相談や病院案内を行っている団体があります。多言語対応の医療機関の紹介も行っています。
- AMDA国際医療情報センター:
- 電話: 03-6233-9266(東京オフィス)など、各地にオフィスがあります。
- 対応言語や時間帯は、各オフィスによって異なりますので、ウェブサイトで最新情報を確認してください。
- AMDA国際医療情報センター:
- 自治体の相談窓口: お住まいの市区町村には、外国人住民向けの相談窓口が設置されていることがあります。医療に関する不安や、病院の探し方、保険の手続きなどについて、多言語で相談できる場合があります。
- 医療通訳サービス: 一部の病院では、医療通訳者を配置していたり、NPOなどが医療通訳サービスを提供していたりします。事前に病院に問い合わせてみたり、上記のような国際医療情報サービスに相談してみたりしてください。
まとめ
日本での病気やけがは不安を感じるものですが、国民健康保険制度や、適切な病院の利用方法を知っていれば、安心して医療を受けることができます。困った時には一人で抱え込まず、お住まいの市区町村の相談窓口や、専門の支援機関に相談するようにしてください。
皆さんの日本での生活が、健康で安心して送れるよう、この情報が少しでもお役に立てれば幸いです。